はじめに
患者様用の短下肢装具をオーダーするとき、皆さんはどんな基準で選定していますか?
たくさんの種類がある中で、患者様に最も適した装具を選択・提案するのはPTの大事な役割ですよね。
例えば代表的な金属支柱ダブルクレンザックとシューホーンブレース(以下、SHB)で比べるとすると
今までは、
・感覚障害が重度
・筋緊張が亢進している
・ 支持性が低下している
といった、比較的機能障害が重度な人には金属支柱が、そうでない人にはSHBが選ばれる傾向にあったように思います。
SHBを選択するポイント
しかし、SHBを選択する際には以下の点を考慮する必要があります。
麻痺側立脚初期の支点とモーメント
金属支柱の支点は足継ぎ手で、SHBの支点は踵部分にあり、立脚初期に足関節に働く床反力モーメントは、金属支柱は後方に、SHBは前方にかかります。
後方のモーメントは前脛骨筋の遠心性収縮を促しますが、前方のモーメントは下腿三頭筋の求心性収縮を引き起こします。
このことから、SHBは、場合によっては、下腿三頭筋の緊張を亢進させている可能性があるということを念頭に置いておく必要があります。
麻痺側立脚後期の股関節伸展と足関節自由度
麻痺側遊脚期に円滑な振り出しを得るためには、立脚後期に股関節が十分に伸展し、腸腰筋が伸張されることが重要と言われています。
しかし、SHBで背屈角度が固定されていると、股関節伸展を制限してしまい、遊脚期に繋がりにくいことが問題視されています。我々健常者がSHBを装着した際に感じる、足関節の自由度を制限されたことによる違和感がこれにあたります。
ある程度の支持性が得られる方には、金属支柱で背屈方向に遊動を持たせることの方が、上記の動きを引き出すには有効かもしれません。
これらのことから、若年で、活動量が高い人には、上述の機能障害が重度でないとしても、敢えて金属支柱を選択する方がいい場合もあると考えます。
おわりに
プラスチックAFOの中でも、踵くり抜きやタマラックなど、足関節部の可撓性を高めたものもありますし、ゲイトソリューションなどの高機能継ぎ手もあります。
何が適しているかは患者様によって千差万別ですし、今回提示した視点は、考慮すべき様々な視点の一部に他なりません。
これまでの一般論に捉われず、柔軟な思考で、様々な種類を試しながら、ベストな装具を選択できるPTになりたいですね!
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