歩行自立を判別するための予測チャート

歩行自立を判断するための予測チャート

脳卒中患者の回復期リハビリテーション病棟入院時情報から 3 ヵ月後の歩行自立を判別するための予測チャート

「紹介する論文について」

今回は興味深い原著論文を紹介します。
回復期脳卒中患者の歩行自立予測 
─ 信号検出分析による臨床応用を目指した検討─
吉松 竜貴、加辺 憲人、橋本 祥行、
牧迫 飛雄馬

 

理学療法科学.
2018 年 33 巻 1 号 p. 145-150

「CVA患者の回復期退院時の予後予測チャート」

内容を大まかに説明すると、
この研究は、
脳卒中患者の回復期リハビリテーション病棟入院時の情報から 3 ヵ月後の歩行自立を判別するための予測チャートを作成することが目的となっています。
患者さんの予後予測を、入院時点でできるということは、PTにとってはかなり頼りになる情報ですよね。

しかも、「3カ月後」という、回復期病棟の全国平均在院日数に合わせているという点で、ちょうど「退院時」の予測としても活用できそうです。

時間のない方は、結果の図1の予測チャートだけでもぜひチェックしてみてください

回復期病棟入院時点のFBS、起居動作の介助の有無、認知機能の3項目で、3カ月後の病棟内歩行自立を予測できる、と示唆しています。

担当の患者さんを予測チャートに当てはめて、予後予測の参考にすると良いかもしれません。

こうして結果だけを見ると、すぐにでも臨床で使えそうな気がしてきますね。

しかし、研究論文を読む上で注意すべきなのは、結果を正解だと鵜呑みにせず、「参考程度」に捉えることです。

何故「参考程度」なのか

論文を読む、ということは、本来であれば、全文を読んだ上で、批判的に吟味することが理想ではありますが、時間的にも、内容的にも難しい場合は、考察の最初の1段落〜2段落目までを読んでいただければと思います。

感度と特異度についてわかりやすく説明されており、これが、チャートを鵜呑みにしないための注意点の一つです。
感度がそこまで高くない、ということは、自立しない人を自立すると判定してしまう可能性をはらんでいる、と考えられます。

(この論文だけでなく、他の研究でも、感度と特異度というワードはよく出てくるので、この機会にチェックしておくと良いかと思います。)

その点を理解していれば、チャート通りの予後にならない人もいるから、「参考程度」にしておこう、という捉えられるようになると思います。

この論文は、そのことを念頭に置いた上で、活用したい資料です。